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エヴァ・ガ−ドナ−(女優)
Ava Gardner

1922.12.24−−1999.1.25

乱行 rough behavior

「リズ(エリザベス・テイラ−)と私はよく 売春婦といわれるけれど、私たちは聖人なの よ。私たちはこそこそ隠れて恋愛をするよう な偽善的なことはしない。恋をしているとき は、男の人に忠実で裏切ることはないわ」 「私は田舎の娘、気取らない、普通の値打ち しかない女よ」
 エヴァ・ガ−ドナ−はノ−スカロライナ州 スミスフィ−ルドのグラブタウンに生まれた 。本名はエヴァ・ラヴィニア・ガ−ドナ−。 幼いころ、小作農だった父が土地の保有権を 奪われ、不景気もかさなって一家の生活は困 窮した。
 エヴァが十五歳のときに父が死亡。アトラ ンティック・クリスチャン・カレッジを卒業 した年に姉を頼ってニュ−ヨ−クに出て、モ デルの仕事を始める。
 姉の夫ラリ−・タ−はプロの写真家で、数 百枚にのぼる義妹の写真を撮っていたが、そ のうちの何枚かを当人には内緒で、MGMの 関係者に見せたところ、ハリウッド入りをす すめられた。あるいは、たまたま写真のうち の一枚がショ−ウインドウに飾ってあったの で、スカウトされたのだという説もある。
 しかし、MGMのテストでは、南部訛がひ どく、発声教育を受けて、週給五十ドルで契 約となった。
「演技も台詞もダメ、どうしようもない」
 初めてスクリ−ンテストを見たルイス・B ・メイヤ−は言った。
『ウィ・ワ−・ドリ−ミング』でデビュ−。 デビュ−後まもなく、子役から大人のスタ− になったばかりのミッキ−・ル−ニ−と最初 の結婚をする。夫は二十三歳、妻は二十歳。 二人の結婚生活は周囲が危惧したとおり、翌 年の四四年までの一年半しかもたなかった。
 エヴァ・ガ−ドナ−の名前がキャストとし て出るようになったのは、四四年の『恋愛聴 診器』からで、翌四五年に、バンドリ−ダ− のア−ティ・ショ−と再婚。このころから、 エヴァの運気は上向いた。
 一九四六年にユナイトが彼女を借りて、『 ウィストル・ス−プ』にジョ−ジ・ラフトの 相手役で主演させた。次いで、ユニヴァ−サ ルが『殺人者』に起用して、バ−ト・ランカ スタ−と共演。この『殺人者』の悪女役は強 烈なセックス・アピ−ルでセンセ−ションを 巻き起こした。
 一九四七年にア−ティ・ショ−と離婚。五 一年に歌手フランク・シナトラと三度目の結 婚。五三年には『モガンボ』でアカデミ−助 演女優賞候補に選ばれた。受賞は逃したもの の、この年の『モ−ション・ピクチュア・ヘ ラルド』誌が選出した興行収入ベスト・テン 俳優の第三位にランクされた。
『モガンボ』撮影中に、ジョン・フォ−ド監 督がエヴァにフランク・シナトラのことを聞 いた。
「エヴァ、あの五十五キロの小男のどこがい いのかね?」
「そうね」
 すぐにエヴァは答えた。
「五十五キロのうち、フランクは五キロで、 残りの五十キロは彼のコック(ペニス)だっ てところ」
 一九五四年にはエリザベス・テイラ−始め てハリウッド女優のほとんどが出演を希望し たといわれる名作『裸足の伯爵夫人』(主人 公、マリア・バルガスがとても魅力的で、女 優として一度は演じてみたい役といわれる) にマンキ−ウィツ監督の推薦で主演し、二十 六万ドルの主演料を獲得した。グラマ−女優 から演技派へと脱皮を果たして注目を浴びた 。
 エヴァは六十八歳で、華麗な生涯を閉じる まで、男たちにかしずかれ、乱行の数は知れ なかった。
 シナトラと結婚しているあいだも、億万長 者のハワ−ド・ヒュ−ズとの関係は続いてい た。ヒュ−ズはエヴァにあらゆる援助をした が、俳優のロバ−ト・ミッチャムにこうこぼ している。
「もし、エヴァとのセックスを断ったりした ら、ホモだと思われるぞ」
 ヒュ−ズはエヴァの望みをなんでもかなえ てやった。彼の専用機ボ−イング・ストラッ トライナ−でメキシコによく遊びに行った。 機内の後部座席には寝室やカクテルバ−があ った。
「ボタンひとつ押せば、すぐに飛行機の準備 ができて、どこにでも行ける。もう一度ボタ ンを押せば、ホテルのスイ−トル−ムが待っ ているという調子」(『エヴァ・ガ−ドナ− 』自伝)
 奇人で、人嫌いのヒュ−ズは極端に人目を さけてエヴァとデ−トをした。二人が一緒に いるときの写真は、ヘビ−級のジョ−・ルイ スの試合をリングサイドで観ているときのも のだけだが、誰もがこのロマンスを知ってい た。二人の関係は十年以上も続いた。
 二人はよく喧嘩したが、仲直りをもちかけ るのはいつもヒュ−ズだった。
 ヒュ−ズは一度だけ、顎がはずれるほどひ どく、エヴァに平手打ちを食らわせたことが ある。エヴァは花瓶を取ると、ヒュ−ズめが けて投げつけた。
 ヒュ−ズは、クリスマスプレゼントに真新 しいキャデラックを贈った。誕生日にはなん でもほしいものを贈ると約束した。
 エヴァは無理を承知でこう言った。
「大きなバスタブいっぱいのオレンジ・アイ スクリ−ムがほしいわ」
 二時間後には、ウエストウッドの彼女のア パ−トにアイスの入ったバスタブが届けられ た。
 ヒュ−ズについて、エヴァは四十年後にこ う語っている。
「彼とは最初から相性がよくなかったの。愛 していたわけでもないし」
 ヒュ−ズはエヴァにプロポ−ズしたが、つ いにエヴァは心を動かされなかった。こうし た彼女の態度が、かえって億万長者を魅きつ けたのだろう。
 ヒュ−ズにかぎらず、シナトラに対しても 自分の主張を曲げたり、おもねったりする態 度をまったく見せなかった。
 シナトラがエヴァを熱烈に追いまわし始め たのは一九四八年からで、最初は真剣に受け 止めたわけではなかった。だが、二人はなん となく相性が合い、共通点が多かった。大酒 飲みで、チェ−ンスモ−カ−で、落ち着きが なく、性格も激情型というふうに似ていた。
 あるとき、二人はパ−ムスプリング近くの 町で、酔って大騒ぎをした。挙げ句に、シナ トラはエヴァに弾がこめてある三十八口径の ピストルをわたして、カリフォルニア州のイ ンディアオまで「町を撃ちまくって」車を飛 ばした。街灯や商店のウィンドを壊しただけ でなく、銃弾が一人の男性のからだを掠めた 。
 二人は逮捕され、保釈金を積んで釈放され た。当時シナトラは二年間、ヒット曲がなく て、映画に活路を見いだそうとしていた。そ の彼にエヴァが同情したらしい。
 エヴァは容姿にほとんど無頓着だった。他 の美人女優のように、化粧で飾りたてること がない。実際、彼女は化粧をしていないほう が綺麗だった。
 とくにスタイルを気にしたり、酒を控えた りするということがない。そのうえ飾らない 性格で、気性が激しい。そんな彼女に、甘え ん坊のシナトラは降伏したのだ。
 妻のナンシ−とはまだ結婚していたが、真 剣に離婚を考え始めた。
 あるとき、エヴァがア−ティ・ショ−とい ることに嫉妬したシナトラは、激怒してショ −の自宅に電話をした。
「さよならが言いたかっただけなんだ」
「どこに行くのフランク」とエヴァは聞いた あと「私も一緒に行くわ」
「君にはついてこられないところだよ、ベイ ビ−」とシナトラが言ったあと、銃声が一発 聞こえた。
 銃声はハンプシャ−・ハウス八階のシナト ラの部屋から聞こえた。
 狂乱したエヴァが部屋に入ってみると、シ ナトラはパジャマを着て静かにベッドで本を 読んでいた。シナトラは狂言自殺を演じたの だ。
 二人は六年間の結婚生活を送ったが結婚か ら離婚まで、お互いに激しい感情のぶつかり あいに疲れ果てて終止符を打った。
「私はハリウッドで手首を切ったり、睡眠薬 を飲んだりしたことがないただ一人のスタ− よ」
 とエヴァはいつも言っていた。

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