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ボニ−・パ−カ−(無法者)
1910.10.1−−1934.5.23

無法者 outlaw

 ボニー・パーカーとのその恋人のクライド は、アメリカ経済大不況下、禁酒法時代に南 部を暴れまわったギャングとして名を馳せた。  十二名の罪無き人びとが殺された。
 彼女は小柄でほっそりとしたからだに、レ モンイエローの髪が似合っていた。流行のド レスとスピード・カーが好きな女の子だった。  もっと好きだったのは男たちだが、最愛の 男の名はクライド・バロー。
「職業は?」
「銀行強盗さ」
「ほんと? カッコイイ」
 テキサス州ダラスの下町でウエイトレスを していたとき二人は出会った。ボニーが十九 歳で、クライドが二十一歳だ。
 ボニ−には、兄と妹がいる。彼女の父、ヘ ンリ−は彼女が四歳のときに亡くなり、一家 はテキサス州ダラスの郊外に引っ越した。  周囲は貧しい人ばかり、エネルギ−の捌け 口に不満をつのらせていた。ボニ−はなんと か高校にまでかよい、クラスでも人気があっ た。
 ボニ−はロイ・ソ−ントンという若者と結 婚したが、クライドと会った一九三〇年一月、 夫はすでに刑務所に入っていた。
 ロイは経験豊かな金庫破りだった。強盗事 件で逮捕され、五年の刑で服役中のとき、ク ライドがボニ−の前に現れた。
 ボニ−にとって、クライドは会うべき運命 の男だった。
 ボニ−の妹のビリ−・ジ−ン・パ−カ−は こう語っている(一九六八年ころ)
「ボニ−はとっても心の優しい女性で、私た ちの共通の友だちが病気だったので、当時彼 女は働いていなかったこともあって、面倒を 見にきてたのです」
 当時、クライドは警察に追われていた。ボ ニ−とクライドは会ってから、逮捕されるま での二週間ずっと一緒にいた。クライドは五 件の車泥棒の容疑で、二年間の有罪判決を受 けたのだった。
 クライドは逃げられると考えた。愛する人 のためなら、ボニ−は喜んで助けるつもりで いた。
 ボニ−は三二口径の拳銃を密輸した。クラ イドは逃亡して、州を越えたが、三週間ほど でに、再逮捕された。クライドは連れ戻され、 十四年の刑を受けた。
 クライドはハンツヴィル刑務所に入れられ た。そこでラルフ・フルツという相棒と出会 う。二人は刑務所の農場で働いた。
 囚人たちは、殴られ、虐待された。クライ ドの相棒のフルツも酷い目に遇わされた。看 守は百九十センチ近い大男、クライドは百六 十五センチしかなかった。
 クライドが復讐の計画を実行するのに、三 年間かかった。
 一方、ボニ−とクライドの関係は、手紙を 交わすうちに、深まっていった。
「カワイコちゃん、俺はきみのことをこんな に好きだったなんて知らなかった。地球上で、 一番君を愛しているよ」(一九三〇年二月十 四日)
「お手紙を読みました。私はとっても孤独で 憂鬱な気分なの。もし、私があんたと一週間 一緒にいられるんなら、私はいつでも死ねる よ」(一九三〇年四月十九日)
 一九三二年二月、両親の働きかけなどによ ってクライドは早く出所できた。
 クライドはまた、警察に追われることにな った。
「この街にはうんざりよ」
 クライドは、ボニ−に刺激的な変化を与え てくれそうだ。
「気に入ったわ」
 クライドが何度目かの監獄暮らしから解放 されると、二人は銀行強盗をやることにした。 「私はあんたに賭ける」
 ボニーは車の窃盗容疑で、逮捕されたが、 告訴されずに釈放された。
 だが、殺戮は始まっていた。わずか四十ド ルのために宝石商を殺したのだ。
 お金が入ると、ホテルに泊まり、レストラ ンで豪華な食事をした。ボニーはいつも派手 な生活を望んでいたが、二人の奪ったお金の 最高額は千四百ドルで、一カ月の平均は七十 ドル程度だ。襲った銀行が倒産していたり、 割に合わない犯罪だった。
 ボニーは”命知らずのサール”クライドは ”テキサスのガラガラヘビ”と新聞に大きく 報道され、悪名は広がっていった。
 むしろそれを楽しんでいるように見えたが、 二人にはもはや安息の場所はなかった。盗ん だ車のなかや空き家、野宿などをして眠り、 サンドイッチやアイスクリームなどで飢えを しのいで逃亡した。
「捕まるのも時間の問題だわ。その前にママ に会わなきゃ」
 ボニーには「いつ死んでもいい。愛する男 と一緒なら」という覚悟ができていた。
 一九三四年五月二十三日の朝、ボニ−とク ライドの仲間の父が息子を助けるために警官 に密告した。
 六人の私服警官たちがルイジアナ州の田舎 道の草むらで息をひそめて待ち伏せていた。 仲間の刑務所破りを成功させ、火傷からも回 復していたボニーには、なぜかこれからもう まくいくように思えた。
 ボニーは男と犯罪が好きだった。クライド を愛してはいたが、彼は潜在的にホモで、彼 女の性的な欲求を満たしてはくれなった。そ こで、他の男と寝たこともある。
「瞬間こそが私にとって大切なの」
 ボニ−は刺激を求め続けたが、彼女の心を 癒してくれるものは、クライドを除いて誰も いなかった。
 クライドは刑務所で厳しい生活を送ってか ら、誰も信じないが、生き方そのものが、変 わってきていた。
「俺のシュガ−(ボニ−)は違うんだぜ」  クライドも誰かを信じたいと思い続けてい た。
 いつも現実主義で、自分を厳しく見つめて いる彼女には珍しく、はしゃいで寛いだ気分 だった。ボニーとクライドを乗せたフォード V8セダンが白く埃っぽい道に差しかかる。 笑いながらリンゴを頬ばっている上機嫌のボ ニー。
 突然、カタカタと銃の鳴る音。
 その直後、八十七発の銃弾が炸裂した。  二人のからだは宙に浮く。
 ハチの巣のように打ち砕かれた。
ボニ−とクライドは、壮絶な最期を遂げた が、愛を信じていた分、二人は幸せだったの もしれない。
 二十三歳の短い命だった。
 一九三四年五月二十六日、ボニ−の葬儀は 近親者だけで行われることになっていたが、 二百五十名もの多くの人びとが参列した。
母のエンマ・パ−カ−によって、髪の毛は ウエ−ブをかけ、以前にも負けないくらいく らい小ぎれいにセットされた。爪にもマニキ ュア、青い絹のネグリジェ。ユリの花束を娘 の手に握らせた。

 いつか二人はともに倒れ/並んで葬られる/  一握りの者には悲しみ/世間のヤツらには 安堵/
 だが、ボニ−とクライドには死

 ボニ−とクライドは、ボニ−の母の強い反 対で、それぞれ別の墓に眠っている。
 ボニ−の墓石は、ダラスのフィッシュトラ ップ墓地にあったが、一九四五年に同市のク ラウン・ヒル墓地に移された。クライドはウ エストダラス墓地に葬られている。
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