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聖林百話
3.いちじく畑が聖林になった・・・わけ
日本ではハリウッドのことを聖林と当てることがあるが、これはHOLY(聖なる)WOOD(森)からきているものと思われる。
だが、英語のつずりは、HOLLY(ひいらぎ)である。したがって、HOLLYWOODは正確には「ひいらぎの森」でなくてはな らない。 もっとも、ひいらぎでは今日の繁栄があったかどうか?誤訳の聖林は本質をついた名訳だった。
HOLLYWOODの白い文字にはどこか聖なる力があるように思える。筆者はできるだけ間近で見ようとマウント・リーに車 を走らせてみた。あたかも富士山に登るような気持ちで。 山の中腹まで辿り着くと、歌手マドンナの邸宅があった(現在は住んでいない)。邸宅の前方にはハリウッド湖があり、後方には ハリウッド・サインが見える。マドンナはこの邸宅でスターとしての満足感を味わったにちがいない。
要塞のような邸宅の入り口には侵入者への警告があった。それでも勇者が鉄柵を乗り越えようとして銃で威嚇されたという。
筆者は、マリリン・モンローの簡素な家を見たあとだっただけに、複雑な気持ちだった。
ハリウッドの大看板に近づくにつれて、それまでくっきりと見えていた文字が見にくくなった。全体を見るには、マドンナ邸からの眺めが最高である。
それにしても、HOLLY(ひいらぎ)は、どこにあるのか?
じつはどこにもないのだ。このあたりは、FIGWOOD(いちじく)果樹園だったのだから。この地帯はアプリコット、びわ、ぶどう、アボガドなどが生育する。
ほんとうはFIGWOODと呼ばれる土地がHOLLYWOODと命名されるには、ある夫婦の秘めたる物語があった。
「あなたFIGWOOD(いちじく)じゃおもしろくないわ。HOLLYWOODにしたら?」
その一言に、夫のハーヴィ・ウィルコックスは思わす、あいづちを打ったのである。カンザス出身の不動産業者ウィルコックスは1883年に、ロサンゼルスにやってきて、サンセット大通りからサンセットの南に広がる120エーカーのカヒュンガ・ヴァレーを買い占めた。購入価格は1エーカー150ドルだった。
その土地をどう命名しようかと迷っていたときに、若く美しい妻の一言が決め手となった。もっともウィルコックス夫人には、とりたてて深い理由はなく、たまたま列車で乗り合わせた女性が「ハリウッドという別荘に住んでいる」と語ったからである。そこはひいらぎの低木が生育して、すばらしい環境を作り上げているらしい。
「その見知らぬ土地のことがすっかり気に入ったの」
ウィルコックス夫人は、神秘的な言葉の響きのするハリウッドに魅せられた。そして夫の土地にその言葉を使いたかった。夫は「ひいらぎは幸運をもたらす」という妻の感性を信じた。
かくして、1887年2月1日にハリウッドと命名された。1903年から人々が住み始めたがが、当初人口は700人だった。
夫がこの世を去ってからもウィルコックス夫人は広大な土地を管理し各団体に数区画を寄贈したりした。その後夫人は再婚して、1914年に亡くなるまで、「ハリウッドのゴットマザー」として地域の発展に貢献をした。
最初の分譲のときに植えたひいらぎの低木は不幸にもすべて枯れてしまったが、その後もハリウッドという名前は、生き続けている。
現在、ひいらぎはハリウッドの象徴であり、權木、大枝、葉の一枚でさえ、この街の紋章、映画産業のシンボルマークになっている。
あたかもその聖なるシンボルに吸い付けられるように世界中から人びとが集まってくる。
「ハリウッドはエルサレムと同じくらい人びとが足を運ぶ聖地だ」
(作家、ブレーズ・サンドラー)
サンケイスポーツ 1999/1/25 掲載
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