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スリー・ツウ・ワン・・・。
時計の長針と短針が12時のところで重なった。
A HAPPY NEW YEAR!(新年おめでとう)
A HAPPY HOLLYWOOD!(ハリウッドおめでとう)
タキシードの紳士と、ドレスアップした淑女が抱きあい、キスをして新年の訪れを祝っている。
リージェント・べヴァリー・ウィルシャーホテルの1999年の新年を祝うカウントダウン・パー
ティーに参加した。素晴らしい体験だった。
1928年にベヴァリー・ウィルシャー・ホテルとして開業して以来、ハリウッドの名士や多くの
観光客を引きつけてきた。最近では映画【Shall We ダンス?】のオープニングパーティーが
行われたこともあって、日本人観光客にも知られる。ワインの種類が豊富なことでも有名で、
ワイン通にはこたえられない。ブランド店が立ち並ぶロデオ・ドライブが目の前なので、買い物
好きも注目のホテルだ。
このホテルのダイニング・ルームには正装した紳士淑女たちがいまや遅しとその瞬間を待って
いる。部屋には赤、白、青、黄金など色とりどりの風船が飾り付けてある。テーブルの上には
当夜の晩餐のメニューとパーティーを盛り上げる小道具。紙製の笛や、ノイズメーカーと呼ばれる
小物などが並べてあり、遊び心をかきたててくれる。
アメリカではクリスマス・パーティーがあくまでも家族単位で宗教色の強い儀式であるのに対して、
新年の集いはより自由で、華やいだ気分を味わえる。
新年を祝うカウントダウンといえば、ニューヨークのタイムズスクエアで「ニューヨーク・タ
イムズ」紙が宣伝を兼ねて行ったものを思い浮かべる人も多いかもしれない。それをハリウッド
の人々はもっと、リラックスした方法に変えたのだ。
前菜のアヒルのスプリングロールやキャビアが運ばれた。テーブルの上には、星や太陽、シャン
パンやワインのグラスを形どった飾り付け物が散りばめられていて、料理をいっそう豪華なもの
にしてくれる。
西海岸と東海岸とには3時間の時差があるので、パーティーの開始時刻の午後9時は、ニューヨーク
では12時。すでにカウントダウンが行われた(日本では、1月1日午後2時だ)。
先程まで、恋人らしき女性と静かに会話を交わしていたブラックタイの青年が紙製の笛を鳴らし
た。
「プーッ」
ちょっと拍子抜けした音に、連れの美人が声を立てて笑った。
金属製のノイズメーカーは、ウィスコンシン州からきた若者たちだ。元日に行われるUCLAとの
ローズボールと呼ばれるフットボールの試合観戦のためにロサンゼルスにやってきたのだ。会場
となるパサデナでは試合の前に名物のパレードが行われるが、今年で110回目を迎える。
ダイニング・ルームでは笛やノイズメーカーの音が大きくなり、生バンドの演奏もテンポの速い
曲に変わった。あと5分。
「踊りませんか?」
誘われて筆者も、その輪に加わった。ダンスフロアのカップルたちのステップも速くなった。
独立系の映画プロデューサーであるトム・スミス氏は、このカウントダウンに恋人と参加した。
「もっと多くの人々がハッピーになれる映画を多く作るのが夢だ」
ハリウッドでは、つねに前に向かって挑戦していかないと生き残れないが、チャンスは誰にも公
平にやってくる。
「ニューヨークの証券会社を辞めて大ヒットする脚本を書くためにハリウッドにやってきた」とい
う若者は仲間数人と踊っている。
いまハリウッドには、全米各地、世界中から「イキのいい人々」が集まってきている。まさにその
縮図を見る思いがした。
日本からは、会社社長夫妻が参加していた。こういったパーティーに参加するのは初めてだが、「
ほんとに元気が出ます。来てよかった」と羽根飾りの夫人がいうと、金ピカの帽子をかぶったご主人
から大きな笑みがもれた。
カウントダウンが終わると大きな歓声が起き、白い紙テープが舞った。
新年の挨拶を交わすどの顔も自信に満ちあふれている。
いま、ハリウッドは世界中のどこよりも活気にあふれた街だ。
サンケイスポーツ 1999/1/11 掲載
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