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聖林百話
20.スピルバーグの世界にようこそ
1日、たっぷり時間があるとしたら、どこで過ごすか?
ユニバーサルスタジオへ行くことを勧める。ハリウッドの休日を満喫できるはずだ。性別、年齢に関係ないが、できるのなら気のあった仲間を誘いたい。楽しみは倍増するはずである。いま、もっとも楽しめるアミューズメント・パークはユニヴァーサルだ。
チャイニーズ・シアターを見たあとはルート101に乗って、車で20〜30分、ちょうどハリウッドサインの向こう側に出ると、山の上にスタジオはある。
ユニヴァーサル・スタジオがオープンしたのは、1964年のこと。その2年後の1966年に、当時サラトガ・ハイスクール3年生のスティーヴン・スピルバーグ少年はツアーに参加した。以来、彼はスタジオにかよいつめた。
「週に2回は撮影所のあちこちを見て歩いた」
映画製作の基本は、すべてユニヴァーサルから学んだのだ。
現在の最大の呼び物は、なんといっても500ポンド(226.5キロ)の巨大なゴリラだ。
ガイドブックには、そう書いてある。
だが、現地に着いたら迷ってはいけない。
私と仲間たちは、マップを握りしめて急いだ。目的地は、「ジュラシック・パーク・ライド」だ。このライドは、スピルバーグ自身のアイデアがもりこまれている。これに乗らずしてユニヴァーサルを体験したことにはならない。
中央公園を抜けると、崖になっていて、広大なスタジオが広がっている。目がくらみそうだが、マップをよく確かめて、スターウエイ・エスカレーターに乗る。
「パーク・ライド」の入り口に着くとすでに列ができている。待ち時間は、10〜15分。(正月や、日本人の休暇時はもっと混むとガイドブックには書いてある)。こういうときはやはり、仲間はありがたい。これから迫り来る恐怖についてちょっとおしゃべりでもしていればすぐに順番がやってくる。
だが、このおしゃべりになって忘れてはいけないことがある。水濡れ防止のカッパを買うことだ。頭からすっぽりとかぶってから、ライドに乗り込むことだ。私たちはきちんとこれを守った。
ライドに体を固定され、バーをしっかりと握る。恐竜攻撃にも耐えられるように。座席は最前列で攻撃は受けやすいが、これは係員の指示なので仕方がない。
ライドが門(ゲート)をくぐると、「ジュラシック・パークにようこそ!」の案内とともに、テーマ音楽が聞こえてくる。とその瞬間、水の中からブラキオザウルスが顔を出す。
「キャーー」
悲鳴は私が発した声ではなく、仲間からのものでもなかった。
ライドは洞窟の中に入っていく。すると暗闇が襲い、警報音が鳴ひびいたのだ。
「危険な恐竜が逃げ出した」
またしても悲鳴。だが、私たちは沈黙したままだ。あまりの恐怖からか、あるいは言葉がよく聞き取れなかったかは不明。
あちらこちらから肉食恐竜が飛び出してくる。
その直後、体がふわりと軽くなったと思ったら、ライドが滝から滑り落ちた。とたんに、「バシャー」と水が落ちてきた。
「ううう」
今度はまちがいなく、私と仲間たちからの奇声だ。
あれほど、覚悟していたのに。最前列の特等席では、水攻めは防ぎようがなかった。カメラをしっかりかまえて、恐竜の姿を捕らえようと思っていたが、失敗に終わった。
だが、恐怖におののいている姿を隠しカメラはしっかりと捕らえている。
「やられたね」
濡れた衣服を乾かしながら、私たちはぼんやりと考えていた。
「でも、もう一度乗ってみたい」
スピルバーグの世界に引きこまれ始めていた。ふと隣のアトラクションを見ると、「E・T・」とある。お楽しみはまだまだ続きそうだ。
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