三枝成彰のオペラへの夢
わが国を代表する作曲家・三枝成彰(六二)のライフワーク・オペラ作曲計画は壮大で、
世界にも例がない。構想十年、オペラ『忠臣蔵』(一九九七年)で脚光をあびた。『千の記憶の物語』
(一九九一年)『オペラ ヤマトタケル』(二〇〇一年)『Jr.バタフライ』(二〇〇四年)などを
発表。その後、『関ケ原』『平家物語』など全作品が完成するのは二〇二五年。そのとき三枝は
八十三歳になる。三枝の活動は音楽界での話題にとどまらず、いまや文化的な一大イベントまで達
している。作曲家のみならず、三枝はプロデューサーでもある。当初、オペラ『忠臣蔵』の全体の
予算は三億円程度と設定したが、予算の規模は膨らんだ。舞台制作費に一億千五百万円、さらには
舞台人件費、大道具の運搬費用などを合わせると約二億円。予算はしめて五億円。定められた予算
で、できるだけいい物を作るにはどうすればいいか。プロデューサーの仕事の一番大きなところ。
作曲だけしていれば自己主張だけですむが、そうもいかない。三枝の葛藤がある。
東京芸術大学大学院時代に安宅賞を受賞した三枝が一般に注目されたのはNHKの朝の連続テレビ小
説『北の家族』の音楽を担当、みずからもピアニストとして出演したころから。美しい音楽と清潔
感のある容姿に女性ファンが魅了された。三枝はNHKのプロデューサーだった父・嘉雄の勧めで四
歳のときからピアノを習い始めた。さて、三枝の父はNHKで大きな発案をしたが、何か?「NHKのど
自慢」。父は自分の夢を息子に託した。小学四年生で作曲を始め、前衛的な作品を発表してきた三枝
が「作曲をやってよかったと思い始めたのは四十五歳くらいから」。オペラが自分に合っている。「
好きだからやる」。今年も清貧に甘んじ、睡眠時間を削ってオペラの作曲に打ち込む日々が続く。
2005/1/1 フジサンケイ ビジネス・アイ
















