幸福のラーメン王・安藤百(もも)福(ふく)

  日清食品の創業者・会長の安藤百福(九五歳)がチキンラーメン」の開発に成功したのは四十八歳。「人生に遅すぎるということはない。五十歳でも六十歳からでも新しい出発はある」(『私の履歴書 魔法のラーメン発明物語』日本経済新聞社)。いまや、インスタントラーメンは世界中で食べられ、年間に六百五十三億食。今年三月五日、九五歳の誕生日を迎えた安藤の人生は、まさに波乱の連続だった。両親の顔を知らず育った少年は早くからビジネスの才を発揮した。「日本人はめん類が好きだ。誰でも食べらるようにできないか」。あるとき妻がてんぷらを揚げているのを見ていた。高温の油で揚げた小麦粉のころもは時間がたつと水分を吸ってやわらかくなる。このとき安藤は世界初の即席めんのアイデア「瞬間油熱乾燥法」の商品化を思いついた。では、なぜチキンスープなのか? 即席めんの開発は家族全員の協力のもとで行われていた。「ある時、調理中にぐったりしていたニワトリが突然暴れだした。そばにいた息子の宏基がひどく驚いて、それからトリ肉はもちろん、好物だったチキンライスまで口にしなくなった」(『私の履歴書』)。ところが祖母がトリガラからとったスープでラーメンを作ると宏基(現・社長)が喜んで食べたのだ。そのときスープをチキン味にするアイデアが浮かんだ。安藤にとって忘れられない思い出がある。戦争末期、設立した軍需工場で資材を「横流しをした嫌疑がかかって尋問を受けた。朝九時から夜中まで尋問は一か月以上も毎日続いた。獄舎で安藤は開眼した。「私は一度、豚になった。そこから這い上がったとき、私は食を掴んでいた」。安藤の経営理念は「日々清らかに、そして豊かに」。三分間待てばいい。インスタントラーメンには幸せが一杯詰まっている。安藤は言う。「人の厄介にならないで、『元気に生きて元気に死ぬ』のが理想」

2005/3/21 フジサンケイ ビジネス・アイ