スターバックス成功神話

「この道をまっすぐ行くと右手にスターバックス(スタバー)、それを見ながら北に三分ほど歩くと左手にスタバー、その先の信号を左に曲がって、一ブロック行った右手が我が家」。道案内のランドマーク、くつろぎの空間。スタバーは私の生活の一部と言ってもいいかもしれない。創始者のハワード・シュルツ(五二歳)はニューヨークのブルックリン生まれ。父はおむつの配達と回収をする仕事で、一家の生活は貧しかった。身体を壊して解雇された父は定職に就けず、社会の不平等を恨みながら世を去った。「夢破れ、自分の仕事に誇りが持てないと人はどうなってしまうか」シュルツはいやというほど知らされた。「金持ち、貧しい人、年齢性別に関係なく、誰でも平等にチャンスを与える会社を作ろうと思った」。言うは易し、行うは難し。だが、シュルツは実行したのだ。一九八七年、三十四歳のとき、地元の資産家たちの支援を受けてスターバックスを創設。働く全員を「パートナー」と呼び、アルバイト店員にも健康保険に加入させ、自社株を有利な条件で購入できるストックオプション制度を導入した。「従業員こそが私のもっとも大切な宝物です」とシュルツは成功の秘密を語る。さて、社名の由来は? メルビルの名作『白鯨』に出てくるコーヒー好きなStarbuck(スターバック)という一等航海士の名からとった。ロゴは「セイレン」(サイレンsiren)というギリシャ神話に出ている二つの尾を持つ人魚。美しい声で船乗りたちを惑わせたという。当初は二つの尾を左右に広げている人魚の絵だったが、裸の女性が足を開いているように見えてよくないという理由で、現在の上半身と尾の先だけに変わった。この三月三十一日、ジム・ドナルドがCEO(最高経営責任者)を引き継ぐ。彼もまた、ゼロからスタートしてトップの座に昇りつめた。「成功物語」の神話は生き続ける。

2005/3/28 フジサンケイ ビジネス・アイ